(87)行動と思想と
決戦が始まろうとしていた。
月面にできたファイナルGシステムの中にも、施設を拡大しようとしたのか採掘中のように広い場所がある。
MSで戦闘を行うには充分すぎる広い空間・・・。
「みんな気をつけて! タッカーがいます!」
イーチィが危険を察知して呼びかける。
「やぁ、ボクを探しているのかい?」
余裕綽々で、ゆっくりと歩み寄ってくるタッカーのマスターガンダム。
今までの敵は全ていきなり襲い掛かってきたが、タッカーは違う。もて遊ぶかのように見定めるかのように近づいてくる。その感じるプレッシャーは、従来の敵とは桁違いだった。
「やっと見つけたぞ! 今度こそお前を倒す!」
戦闘体勢をとるトラッシュに、タッカーはため息をついた。
まるで戦闘態勢をとる気配を見せないタッカーに、トラッシュ達は拍子抜ける。
「人間というのは、なんて愚かな生き物なんだ・・・。正義だ、平和だと語りながら、すぐに暴力で解決しようとする・・・。」
「なんだと?」
タッカーの嘆くような言葉に、トラッシュの声が上ずった。
これではまるで「平和主義のタッカーを暴力で屈服させるトラッシュ達」のような図に見える。
しかし確かにこの瞬間は、トラッシュ達が一方的に戦闘をしかけていることに間違いは無い。
侵略者はトラッシュ達だった。
馬鹿にされている。しかし間違いではない。
「ねぇ、イーチィ?」
タッカーの言葉がイーチィに突然向けられ、イーチィは戸惑った。
他の仲間はタッカーに気圧され動くことすらままならない。
「きみは、どうして・・・人間の味方をするんだい。キミにだって分かってるはずだよ」
「トラッシュさんはわたしを信じてくれました。それに応えたいのです。わたしは人を・・・みんなを守りたい」
「それがキミの答えか?」
タッカーの冷たい光をたたえていた双眸に、悲しみと怒りの色が浮かんだ。
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