(92)大破壊の前に
「トラッシュさん・・・いいえ、なんでもありません」
最後の敵への扉を前にして、イーチィは口を開いた。
イーチィは、トラッシュと目を合わせたが、急に言いよどんだ。
彼女が言おうとした言葉は何だったのだろう?
トラッシュは少し考えてみたが分からなかった。
「絶対に勝ちましょう!世界を! 地球を! 大切な人たちを! いきとし生けるもの・・・すべてを守るために!」
普段はあまり感情を見せないイーチィが、珍しく強い言葉を紡ぐ。
トラッシュ達は少女の言葉に、士気を高めた。
「みんな約束だ! 戦いに勝って! みんなで地球に帰るぞ! あの美しい・・・ボクたちの故郷に!」
トラッシュ達が最後の扉のゲートをくぐると、そこはファイナルGシステムの屋上部分だった。屋上部分のゲートがゆっくりと開き、中から巨大な影がせり上がってくる!
「創造した人を地の表からぬぐい去ろう・・・。人も獣も地に這うものも空の鳥までも・・・。私は・・・これらを造ったことを悔いる・・・。旧約聖書の創世記第6章・・・。ノアの箱舟のくだりに記された一説だ」
タッカーの声が辺りに響く。
「神は遠い昔に・・・人を作ったことを後悔した。そして・・・洪水を起こし、すべてを洗い流そうとしたんだよ。似ていると思わないか・・・これから始まる大破壊と・・・」
「ふざけるな! 神を気取っているつもりか!」
トラッシュは叫んだ。
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