(92)大破壊の前に

やすかわ

2005年10月07日 09:24



「トラッシュさん・・・いいえ、なんでもありません」

最後の敵への扉を前にして、イーチィは口を開いた。
イーチィは、トラッシュと目を合わせたが、急に言いよどんだ。
彼女が言おうとした言葉は何だったのだろう?
トラッシュは少し考えてみたが分からなかった。
 
 
「絶対に勝ちましょう!世界を! 地球を! 大切な人たちを! いきとし生けるもの・・・すべてを守るために!」

普段はあまり感情を見せないイーチィが、珍しく強い言葉を紡ぐ。
トラッシュ達は少女の言葉に、士気を高めた。

「みんな約束だ! 戦いに勝って! みんなで地球に帰るぞ! あの美しい・・・ボクたちの故郷に!」

 
トラッシュ達が最後の扉のゲートをくぐると、そこはファイナルGシステムの屋上部分だった。屋上部分のゲートがゆっくりと開き、中から巨大な影がせり上がってくる!

「創造した人を地の表からぬぐい去ろう・・・。人も獣も地に這うものも空の鳥までも・・・。私は・・・これらを造ったことを悔いる・・・。旧約聖書の創世記第6章・・・。ノアの箱舟のくだりに記された一説だ」

タッカーの声が辺りに響く。

「神は遠い昔に・・・人を作ったことを後悔した。そして・・・洪水を起こし、すべてを洗い流そうとしたんだよ。似ていると思わないか・・・これから始まる大破壊と・・・」

「ふざけるな! 神を気取っているつもりか!」

トラッシュは叫んだ。
関連記事